2012年4月20日金曜日

勝手に深読み!:2003


勝手に深読み!:2003

勝手に深読み!:2003


2003/01/01:「こんなこと、偶然じゃない!」
「真夜中の雨」TBS系テレビドラマ 2002/10〜2002/12

このドラマ、明らかに変でした。いくら、人気俳優が他のドラマとかぶるからって、わざわざ似たような役柄を集めなくっても、と誰しもそう思ったはず。実際、批判する投稿を新聞で見たこともあります。20年も前の事件の関係者が一同に集まるという設定も不自然だと。だいたい、1〜2話のチョイ役が東幹久ですもんね。織田裕二ファンなら、あれ?と思うはず。
で、上の台詞が主人公の口から出ました。「誰かにわざと集められたんだ」、おお!
ひょっとして、狙ってたのでしょうか?だとしたら、かなりあざとい。でも、こういうのは、かなり好きかも。


2003/01/04:「雨の中、傘をささずに踊る」
「THE ビッグオー」サンライズ制作テレビアニメ  2nd.シーズン 2003/01〜2003/03放映(予定)

オープニングがウルトラセブン、ジャイアントロボにナウシカ(「火の7日間」とか)、等々。製作者の「自分を創った作品たちへのオマージュ」か?
1st.シーズン最後の主人公の台詞は、「雨に唄えば」なわけで、アニメ世代とはかぶるとは思えない。でも、分る人だけ分ればいいし、何より、カッコイイジャン!みたいな感じ。主人公のキザぶりも、アンドロイド少女の健気さも、妙に思わせぶりな世界も、常道で本道で邪道。だって、「ショー」だし。やっぱり、作品ってのは、愛よね♪


2003/01/11:「こんな人に、私もなりたい」
「大きな木」シェル・シルヴァスタイン作 絵本

大学生の頃に友人が誕生日に贈ってくれたものです。原語版も買いました。原題は「The Giving Tree」。
無償の愛、献身、自己犠牲...こんな陳腐な言葉しか思いつかない自分が情けなくなります。子供以上の人に読んで欲しい作品です。シェル・シルヴァスタインの作品が子供向けの絵本コーナーに置いてあるのは、私にはどうも納得できません。
彼の詩は、シニカルなものが多いようです。絵本でも「人間になりかけたライオン」は、その哀しい結末が辛いです。でも、本作にある暖かさが彼の人間を見る姿勢の根本のような気がします。
すべての人に読んで欲しい、そんな1作です。


2003/01/18:「少し甘口のシチュウ」
「異星の客」ロバート・A・ハインライン作 SF小説

作者には「宇宙の戦士」という作品があります。私はその作品が、とても好きで、とても嫌いです。発表当時も、賛否両論を巻き起こしたそうです。私に「白人アメリカ男性」に対して、極端な偏見をもたらした作品でもあります。

本作は、「宇宙の戦士」とは全く趣が異なります。異文明との接触、が主題なのでしょうか?私の印象としては、もっと違うものを描いているような気がするのですが。
この作品は、大学時代の友人に薦められて読みました。10代から20代にかけてというのは、人から、本から、映画から、周囲の全てのものから影響を受けます。件の友人の考えには当時から賛同できませんでしたが、彼がその後の私にとても重要な影響を与えたのは確かです。

本作には、少々衝撃的な描写があ ります。ですから、誰にでも薦められるものではありません。ハインラインが、広い見識を持った作家であることを示すものとして、もっと知られて欲しい作品です。


2003/01/25:「僕を忘れないで」
「七つの風の島物語」株式会社エニックス セガサターン用ゲームソフト

売れなかったんですかね、これ。サターン用の人気ソフトは別機種で販売されることもありますが、これは見たことがないのです。すごく、良いゲームだと思うのですが。

売り文句は「究極のデジタルアドベンチャー絵本」。プレーヤーは、太っちょのドラゴンを操作して、様々な謎を解いていくことになります。独特の絵柄・世界にはまれば「最高!」ですし、合わなければ「何、コレ?」でしょうか。

一応、メインストーリーをクリアした後、その後に進まずに、最初からやりなおしかけて、まだ途中のままです。主人公が3種類のコレクションを集めるのですが、「石」の集め方に気づかなくて、全く揃わなかったんです。
メインストーリーの最終パートのムービーは泣きました。3Dで 作りなおして、もっと自由に島を歩けるようにして、別機種で出してもらえないでしょうか?速攻で買います。


2003/02/01:「アカデミー賞男優2人のヌードが見られます」
「バーチュオ・シティ」1995年 米国映画

分類すれば、「B級アクション映画」です。冒頭から、銃の乱射シーンがあり、死体が転がります。ですから、暴力シーンの嫌いな方にはお奨めできません(最近の暴力映画よりは、ずっとマシですが)。
この映画の面白いところは、登場する設定や背景です。人工知能、科学者の倫理、埋め込みチップによる犯罪者の追跡、仮想空間での模擬体験、人造人間、再生する不死の肉体、人体実験...特に私が惹かれたのが、人格のデータ化と合成、です。
主演のデンゼル・ワシントンとラッセル・クロウがアカデミー賞主演男優賞を受賞したことから、レンタルビデオ屋などでも見つかりやすいと思います。機会があったら、見て欲しい作品です。


2003/02/08:「手塚治虫の歴史」
「鉄腕アトム」手塚治虫作 コミック

「正義と勇気の少年ロボット」、鉄腕アトムというと、そういうイメージがありませんか?全巻を読んでみると、そうではないことが分かります。

作者のライフワークとして、しばしば「火の鳥」が挙げられます。火の鳥の立場は基本的に不変です。この作品が「生と死と人間」という根源的なものを主題にしているからでしょう。
一方、「アトム」は、元々「アトム大使」という作品中に登場した少年型ロボットが読者に好評だったために、独立して生まれたました。最初から「読者の眼」の存在抜きにはありえない作品なのです。作者は、「アトムの足の長さ」にも気を使っています。

本作を全巻読み通してみると、その時代によって、作者が悩み苦しんだ姿が垣間見えます。掲載雑誌の都合などで中途半端に 終わった時もあれば、作者の迷いからか、辻褄が合わないようなことも起きます。「人間の味方でないアトム」も登場します。

作者が、自分の後からやってくる漫画家たちに嫉妬していた、という説があります。ありえない話ではないと思います。「嫉妬する」ということは、相手の才能を認め、自分と対等以上の存在と見なしてこそです。様々な「アトム」が描かれた、その同時代に人気を博した他の作者の作品と見比べてみても面白いかもしれません。
量も多いですし、全巻読むことをお薦めしにくいのですが、できれば読んで欲しい。そして、日本のストーリー漫画の礎を築いた作家の「偉大さ」と「人間臭さ」を味わってください。


2003/02/15:「巨匠アシモフに巨人と言われた作家」
「アルジャーノンに花束を」ダニエル・キイス作 SF小説

本作は、ダニエル・キイスの処女作であり、ヒューゴー賞を受賞した「中篇」です。後に、同名の長編版が書かれ、そちらはネビュラ賞を受賞しています。
ヒューゴー賞受賞席で、SF界の巨匠アイザック・アシモフから「どうやったら、こんな素晴らしい作品が書けるのか?」と問われて、キイスが「私も知りたい」と答えた、という逸話を読んだ記憶があります。
この会話は、その後の作家キイスの運命を暗示しているように思えます。

私が本作を読んだのは、中学生の頃でした。作家になることを夢見ていた生意気な中学一年生は、頭を殴られたようなショックを受けました。密度の濃さに圧倒されました。
長編の存在はずっと知りませんでした。社会人になり、勤め先の同僚から「長編もあるよ」と教え られて、借りて読みました。
おそらく、世間一般には、いくつかのエピソードが追加された長編版の評価は、「内容を広げ、深くした」というものでしょう。しかし、私にとっては中篇版を超えるものではありませんでした。
もちろん、多感な13歳と夢も醒めた23歳では、感じ方が異なります。けれども、私にとっての「アルジャーノンに花束を」は、本作なのです。


2003/02/22:「少女から女性へ、羽化の季節」
「桜の園」吉田 秋生 作 少女コミック

高校3年生の秋頃でしょうか。
同じクラスの女生徒たちが日毎に美しくなっていくことに気づきました。蕾がふくらみ、花が開いていくような、そんな時期を目の当たりにした感動を忘れられません。

クラスのほぼ全員が大学に進むような進学校です。しかも、ずいぶん前のことですから、髪を染めるどころか、化粧をする者もいませんでした。
素のままで、日に日に輝きを増す美しさ。休み時間は、彼女らをぼーっと眺めているだけで飽きませんでした。

私は、今でも、この時期の少女たちが化粧をすることには反対です。あの美しさを化粧品などで覆い隠すなんて、犯罪に等しいのではないかと思います。

本作は、チェーホフの名作を演じる演劇部の少女たちを描いたオムニバス形式になっていま す。
「バナナフィッシュ」「夜叉」などのハードな作品が有名な作者ですが、女性を描いた短編は、本当に「上手い!」と思います。
少女マンガなんて、と思われる方も、一読をお奨めします。


どのように死の秘宝が終了

2003/03/01:「フィクションとノンフィクションの間」
「木を植えた男」ジャン・ジオノ原作 フレデリック・バック作 アニメーション

絵本も素晴らしい出来だと思います。でも、アニメーションで見て欲しい、あの語りを聞いて欲しい、最高の1作です。

アニメーションは総合芸術の1つだと思います。物語があり、動画があり、音楽があり、音声があります。本作は、素晴らしい物語を、素晴らしい動画作家が描き、名優が語ります。日本語版では三國連太郎が語りを担当しています。英語版ではクリストファー・プラマー(サウンドオブミュージックのトラップ大佐役が有名)、仏語版はフィリップ・ノワレが演じています。

豊かな土地に、豊かな心が芽生えます。1人の人が出来ることは、本当にわずかですが、そのわずかなことの積み重ねがいかに大切か、素晴らしいか。美しい動画と真摯な語りが、より深い感動を与えてくれます。� �勢の人に見て欲しい作品です。


2003/03/08:「ほたる、なんで死んでしもうたん?」
火垂(ほた)るの墓 野坂 昭如 原作 高畑 勲監督 アニメーション

本作は、劇場公開時に「となりのトトロ」と併映でした。そのことについて、異を唱えた記事を読んだことがあります。
私も同感ですが、商売上は仕方なかったかな、と思います。この作品だけでは客は入りにくいでしょう。
「となりのトトロ」が素晴らしい作品であることは、言うまでもありません。一方の本作は、あまりにも重く、悲しいテーマを扱っています。

本作について、野坂氏か高畑氏が、兄妹をいじめる悪役のように描かれた親戚について弁明していたと記憶しています。曰く「自分の家族を守るために誰もが必死だった」。

世界には、この兄妹が大勢います。少しでも彼らを減らすこと、そして、自分の子供たちがこの兄妹と同じ悲劇を歩まない世界を考えること。
月並みな考えで� �が、子供にではなく、子供を持つ親たちに見てもらいたい作品です。


2003/03/15:「空からプリンス・エドワード島を眺めてみたい」
「ジョセフへの追想」 渡辺多恵子 作 少女コミック

本作は、この作者の他の作品群とは多少趣きが異なります。
他の作品では、等身大か多少戯画化した登場人物や「女の子の憧れ」が題材とされることが多いのです。
そのため、雑誌掲載時に本作を読んだ際、少々驚きました。

これは、とても切ない、悲恋物語です。主人公の最後の決断に胸を打たれます。
私は「ジョセフ」の亡くなった両親の子供への思いに心惹かれます。

本作も、少し古いですが、手に入りやすいのではないかと思います。お奨めです。


2003/03/22:「現実を照らす、おとぎ話の光」
「スター・ウォーズ エピソード2」 ジョージ・ルーカス監督 米国映画

「スター・ウォーズシリーズ」が、ハリウッド流のおとぎ話大作であることを否定する人はほとんどいないと思います。

主人公の師匠であるオビ=ワンは、「政治家は信用できない!」と断言します。
前作から、敵側の黒幕が誰かほぼ明らかですが、敵を作り操作することで、自分の権力を強め、軍事力を手に入れて、戦争状態を作り出し、さらなる支配強化を図る...私の思い込みでしょうか?

主人公が、目の前の悲しみに溺れ、自身の力に慢心することで、耳に優しい言葉に惹かれて暗黒面に入っていく、という展開は、先が見えていても楽しめます。
また、「自分が存在したことの痕跡を残したい」という「クローン細胞提供者」の言葉も、現実世界の問題と重なって見えます。

もちろん、前作や 、その前の3部作との関連など、他にも楽しみ方は色々あります。ポケットの多い作品だと思います。


2003/03/29:「ネコの脳を使った計算機は、ヒトの脳を使ったものよりもマシかもしれない」
「宇宙船ビーグル号の冒険」 A・E・ヴァン・ヴォクト作  SF小説

本作を読んだのは小学生の頃ですが、ずっと心に残っていました。そして、高校生の時、この作品の主人公に憧れて、進学先を決めました...
何回くらい読んだでしょうか?気が向いた時に、手にとってパラパラとめくる本の中の一冊でした。

今からすれば、かなり古臭い作品だと思います。しかし、専門分野毎に更に細分化される傾向のある現在、この主人公の「専門分野」はいっそう魅力的な気がします。
見つけたら読んで欲しい1作です。


2003/04/05:「Let's dance!」
「クラック!」 フレデリック・バック作  アニメーション

ストーリーを一言で述べるなら、「ある椅子の生涯」でしょうか。でも、そんな言葉に意味はないですね。
台詞はでてきませんから、何歳からでも楽しめる思います。そして、何歳でも楽しめる作品だと思います。

「アニメーション」とは、本来「生命を吹き込む」という意味だったということを、私に思い起こさせてくれた作品です。
英語教育のビデオより、こういう作品を子供たちに見せて欲しい、と切に願います。


2003/04/12:「好きな子をいじめる幼児心理、Q」
「スタートレック ネクストジェネレーション パイロット版」 SFドラマ

「スタートレックシリーズ」を見る時に問題になるのが、設定や背景の説明がほとんどないことです。
見る人がみんな知っていることを前提にしているんですね。
特に映画版には、その傾向が顕著な気がします。ですから、ファンでない人と見に行くのはお奨めできません。

本作は、「ネクストジェネレーションシリーズ」のTV放映に先立って作られたパイロット版です。
そのため、宇宙船エンタープライズ号のクルーの初顔合わせシーンやシリーズを通してトラブルメーカー的な存在となる「Q」が登場します。
説明などもある程度されるので、他の作品に比べると、初めての人でも馴染みやすいと思います。

本シリーズの魅力は、エンタープライズ号のクルーにしっかりとした肉付けがされている� ��とでしょう。
このパイロット版では、主要人物の関係が大まかに描かれていますし、主人公であるピカード艦長のキーポイント「子供嫌い」や「プライドの高さ」と「秩序を重んじる厳格さ」が明確に表現されています。
おそらく、前作のカーク艦長との対比の意味もあるのでしょう。
英国でシェークスピア俳優だったパトリック・スチュアートは、本作でエンタープライズ号のメインデッキの中央に数年間に渡って座り続けることになります。

「スタートレックシリーズ」は、終末戦争を生き延びた「理想的な人類」を描くおとぎ話でもあります。
既に次のシリーズが始まっているので、レンタルビデオ店などには並んでいないかもしれません。
機会があったら、是非見てください。


2003/04/19:「花はどこへ行った?」
「なぜ、あらそうの?」 ニコライ・ポポフ 作 絵本

とてもストレートなメッセージの絵本です。本編中に言葉は全く出てきません。
小さいお子さんには、大人が言葉を添えてあげると良いでしょう。

本当は、ここまでストレートな作品はあまり好きではありません。
誰にでも解る、単純な物語、でも、現実には誰も理解しようとしない...


2003/04/26:「生と死の円舞曲」
「火の鳥」 手塚治虫 作 コミック

今回、改めて読んでみて、これが未完の大作であることを知りました。本来、全体を通して1つの長編を構成しているはずだったんですね。
その割りには、最後の方の作品が、少しずれている気もしますけど。

読めば誰でも感じることだと思うのですが、この作品は「鉄腕アトム」と合わせ鏡のような面があります。
生命そのものであり、本来の意味での肉体を持たない火の鳥と、人造の身体で「息子」の代用品として作られたアトム。
お人よしで、誰からも慕われ、地位も名誉も持つお茶ノ水博士と、常に社会のはみ出し者で、憎しみと悩みの中で生きるサルタたち。

この作品は、とてもロマンチックでもあるんですよ。無償の献身と愛の物語がたくさん描かれています。
「ロビタ」や「ムーピー」た ちは、現実にはいないからこそ、あこがれるキャラクターたちです。


2003/05/03:「ある種の狂気」
「ライトスタッフ」 フィリップ・コーフマン監督 映画 1983年

創元とハヤカワのSF文庫シリーズに囲まれて育った私は、最初に購入したレーザーディスクが「2001年宇宙の旅」と「風の谷のナウシカ」でした。
今も、宇宙開発のドキュメンタリー物なるテレビ番組は率先して見ます。

そんな私ですら、思うのです。あのスペースシャトル1機で、エイズ対策や貧困対策を進められたら、どれほどの効果があるだろう、と。

人類の祖先はアフリカ大陸の1地域で誕生し、世界に広まった、という説が有力だそうです。
某SF作家が「未知の地域へ進出したからこそ、現在の人類の発展がある。地球上から宇宙へ進出しなければ、人類の発展は停まってしまう。」と番組で述べていました。
地球の周りにゴミを撒き散らし、地上では殺戮を繰り返す。発展、ですか?

この作品は� ��映画館で観て感動し、レーザーディスクも購入しました。飛行士たちの情熱、誇り、友情、真の勇気。監督は、国家の偉業などというものは描いていません。
映画館での上映中、ある場面で観客から失笑が漏れました。これは、そういう映画でもあります。


良い批判を書き込む方法

2003/05/10:「番組全てがコマーシャル」
「マジンガーZ」 テレビアニメーション番組 原作 永井豪

子供向けの番組の登場人物が、お菓子のおまけについてくる、という手法はテレビマンガが始まった頃からありました。
しかし、番組の企画当初から商品化が盛り込まれ、番組全体が商品の宣伝となる、そういう仕組を作った最初の番組がこれだと聞いたことがあります。

もちろん、当時の私も熱狂的なファンでした。主題歌は今でも歌えます。
永井豪の「原作コミック」もあるにはありますが、当時はテレビマンガと同時連載でした。
ですから、「原作」よりは「原案」でしょうね。
テレビ放映の終了とともに雑誌掲載も中途半端な形で終わってしまったように記憶しています。

ビデオやDVDも出ています。見て欲しいお薦めの1作ではありません。ただ、様々な意味で「重要な作品」だと思います。


2003/05/17:「女神の適正検査結果は、女スパイ?」
「トランジスタにヴィーナス」 竹本 泉 作 コミック

某月刊少女雑誌時代からのファンである私は、ずっと女性作家だと信じていました。

本作は、主人公の美人度、グラマー度とともに、露出度やラブシーン(?)の多さも、この作者にしては多めです。
でも、あくまでも「竹本作品」。下卑たところが全くありません。

作者は、他の作品もあわせて見ると良く分かるのですが、独自のしっかりした世界観を持っています。火星人は火星人だし、サールスはサールスだし、プニュームキンはあくまでもプニュームキンです。そして、月出身者は肌の露出を嫌います。
教育や職業、環境保全、人間と動物との関係(人間の職業上のパートナーとして猫や犬や猿や???が登場します)など、随所に「作者の未来観」が見受けられるのです。

私が本作で気に入って いるのが、主人公の「女神能力」。本当にあるわけがないと思いますが、この世界の中なら納得できる。そんな「何でもありの柔らかさ」が好きですね。
「思いつきで変な話を描いている」という作者の告白は、多分本当のことですが、しっかりした土台があるために破綻していない、と私は思います。

本作では、まだ出てきませんが、雪だるまを扱った話が私は好きなんですよね。本作にはちょっと難しいかもしれませんが、出てくれると嬉しいです。


2003/05/24:「幸せ、満足」
「百万回生きたねこ」 佐野 洋子 作 絵本

読めば幸せになれる本、というのは、それほど多くないように思います。本作は、そんな稀有な1作。

作者は猫に関するエッセイ集も書いておられますが、主人公である猫の表情が、猫を飼っているものなら誰でも知っている「生意気さ」で、納得です。
涅槃とか、解脱とか、難しい言葉で語られるお説教よりも、ずっと説得力のあるお話です。


2003/05/31:「死闘」
「その名は101」 横山 光輝 作 コミック

「バビル2世」という有名なコミックがあります。本作は、その続編です。

「バビル2世」はテレビアニメ化もされ、私も好きな作品でした。もっとも、テレビアニメの常で、原作とはかなり違います。私は原作派ですね。
その後、「マーズ」という作品がありまして、そのラストにショックを受けました。それ以降、この作者の作品は読んでいないのです。
今回、古書店で「バビル2世」全巻と本作全巻が売りに出されていて、まとめて購入しました。

「マーズ」のラスト、その救いようの無さは衝撃的でした。しかし、作品の前半部分には、彼が地球を救おうとする理由がありました。
本作は、全編に救いがありません。彼を救おうとした少女も無残に死んでいきます。
作品には、その時代の「色」 が表れると思います。作者が「色」に影響されるからです。本作の「色」は、今に通じるものと思います。
でも、こういう作品、今は描いても売れないのでしょうね。


2003/06/07:「殺すなら、ここ(頭)を撃ってくれ」
「秘密」 清水 玲子 作 コミック

こういう作品を「少女マンガ」とくくるのは、間違いでしょうね。
最初は「読みきり」として雑誌に掲載され、シリーズ化されたものだと思います。

死後、その脳を探査され、犯罪捜査に利用される。犯人逮捕のため、その人(被害者も加害者も含めて)の究極の「秘密」が顕わにされてしまう。
絵空事とは思えない迫力が、この作品にはあります。
「この秘密は墓場まで持っていく」という台詞がありますが、それも出来なくなる日が、いつか来るのでしょうか?


2003/06/14:「100人殺せば」
「殺人狂時代」 チャールズ・チャップリン 監督・主演

実は、チャップリンの作品というのは苦手なんです。偶然、テレビで本作品を見て、愕然としました。
チャップリン演じる連続殺人犯の主人公の目が、とても優しい感じがしました。
最後の名台詞がとても有名ですね。

この名優を国外追放にした国があるということが、私には信じられません。そして、彼の言葉が今も現実のままだということを、とても哀しく思われます。


2003/06/21:「今、真上」
「なつのロケット」 あさりよしとお作 コミック

このマンガ家さん、かなり青臭いものを描かれます。著者近影を拝見する限りでは、かなり体格の良いおじさんなんですけど。

本作は、作者の青臭さが良い方向に出たものだと思います。
レイ・ブラッドリのSF短編「ウは宇宙船のウ」を思い出す人も多いのではないか、と勝手に期待しています。
萩尾望都さんのコミック版でも可なんで、同志はいませんか?


2003/06/28:「猫バカ」
「飼うか飼われるか」 桑田乃梨子 作 コミック(エッセイ)

動物を飼ったことのない動物好きの少女マンガ家が、雑誌に動物に関するエッセイを連載したところ、迷い猫を拾って飼い始めてしまったという、猫バカ現在進行形(?)エッセイです。
マンガ家さんらしく、エッセイもマンガ。
基本は動物に関する思い出話や読者からの投稿、動物に関して取材した話や旅行などでの経験が主です。

連載途中で拾った迷い猫に情が移って「ま、いっか、もうオレの猫だし」と猫写真が増え続け、最初は大人しかった猫が本領を発揮しだしてからは「借りてきた猫」の真の意味を体感するなど、猫バカになっていく様がとーってもよく分ります。
敢えて、「猫好きには必読の書」と推薦いたします!


2003/07/05:「いらっしゃい」
「ヨーヨーの猫つまみ」 池田あきこ/わちふぃーるど 原作 テレビアニメーション

夜に6分程度の短編アニメとして放映されていました。ご記憶の方がどれほどいらっしゃるか。
猫だけの島「イル・ガット」にあるバー「海猫亭」の主人ヨーヨーと娘のココが、常連客相手に交わす会話と料理のお話です。
当時、ビデオに録画してまで観ていました。

ビデオが市販されたらしいのですが、持っていません。フィルムブックを中古屋で入手しました。
こういう作品がもっと出て欲しいなー、と最近のアニメを観なくなった年寄りは思うのです。


2003/07/12:「恋と変は似ている」
「ローズ・ガーデン」 わかつきめぐみ 作 コミック

今回のタイトルに書いたのは、主人公の1人の台詞です。読んだ瞬間、納得。
気恥ずかしくなる「あの頃」の記憶が蘇ってくるような作品です。私にも、このような初々しいころがあったのですよ、きっと。

世の中に様々な情報が氾濫していて、それに振り回されて、周りに遅れまいとして、自分を見失う、というのは、まだ自分の中の定規を確率していない子供には当たり前のこと。
「今の子供は自分たちとは違う」と思う前に、自分が子供だった頃をちゃんと思い出してみたいです。


2003/07/19:「進化はしていないけれど」
「OL進化論」 秋月りす 作 コミック

4コママンガというのは、実はとっても難しいように思います。アイディア勝負ですもんね。
それでも長くシリーズ化されると、レギュラーキャラクターが出来てきて、連載マンガになってくるわけですが。
この作品は連載何年目なんでしょうね?10年にはなるんじゃないでしょうか?

結局、生き残るのはスター級の人でも大金持ちでもなく、日常をしっかり楽しむ人なんでしょう。
バーゲンを楽しみ、お休みを楽しみ、おしゃべりやランチを楽しみ、たまにはちょっとした贅沢を楽しむ。
横並びでも、お客に顔を覚えてもらえなくても、ちゃっかりと自分らしく生きていく。「誰にでも出来る仕事よ」なんて言いながら、冷静に社内事情を判断していたり。
この作品が楽しめたら、肩の力が抜けた証� �かもしれません。


2003/07/26:「人の命は鴻毛の如く軽し」
「東周英雄伝」 チェン ウェン(鄭問) 作 コミック

私は「命は地球よりも重い」という言葉が嫌いです。あまりにも空々しいからです。
マンガ、映画、ゲーム、劇、小説...様々な媒体で「命を懸けて事を成す」物語が語られています。
「自分の命を軽んずるものが、他の命を尊ぶか?」と私は問いたい。

本作品は、中国の春秋戦国時代の故事を美しく繊細な筆捌きで描いています。
この時代、「名を成すため」「義のため」「忠のため」「信のため」に多くの命が失われていきます。
最初に取り上げられる「英雄」は「要離」という人物です。タイトルは「名を貪った男」。
彼は最後に自身の命の帳尻を合わせます。彼は愚かでしょうか?彼こそが命を懸けて事を成した男なのです。


赤ハンラハンは誰ですか?

2003/08/02:「がんばれ、ピエトロ王子!」
「ポポロクロイス物語」 ゲーム(プレイステーション)

私はモンスター図鑑を完成させました...おみやげも全部揃えたし。
RPGの常として、出現するモンスターをやっつけるわけですが、雰囲気が優しいんです。流れる空気が暖かい。
主人公のピエトロ王子も含め、登場人物と世界観がしっかりしているので、この手のゲームに見られる「なんで?」というご都合主義が目に付きません。
随所に挿入される動画シーンと通常のゲーム画面の違和感もほとんど感じられません。ポポロクロイスの世界にどっぷり浸れます。
大人も子供も楽しめる作品だと思います。続編も出ています。プレイしていません...いつかやりたいです。


2003/08/09:「昭和の男子」
「銀座日記」 池波 正太郎 作 随筆集

「昭和38年から、死の直前の平成2年まで(間に合わせて二年ほどの休載期間をはさんで)、」(文春文庫「B級グルメのおいしい銀座2」より)時代小説作家として有名な池波正太郎氏が銀座のタウン誌に書き続けた随筆集です。
食べることが好きで、戦後は「物書きとして暮らす」ために働き、大衆演劇を愛し、娯楽としての映画・演劇・小説を好み、大正生まれの典型的な「東京生れの」昭和の男としての価値観を堂々と披露した方です。

「漢」じゃないです。「男」です。シャイなんです。自分の意見や考えを相手に押し付けたりしないんです。「オレァ、こう思うね」なんです。

これだけ長い期間書かれると、心の移り変わりが見えてきます。そして、何度も読み返すことで、書かれなかったことの重さ も見えてきます。
そして、最後の文で私は必ず泣いてしまいます。
少なくとも、今の東京都知事は東京を愛してはいないと思うのです。今の世を生きておられないことをお幸せだと思う次第です。


2003/08/6:「冷たい暖かさ」
「藤子不二雄 SF全短編」 藤子不二雄 作 コミック

藤子不二雄F氏には、子供向けのマンガシリーズが多くあります。現在特に有名なのは「ドラえもん」です。
しかし、その雑誌連載と同時進行で、大人向けのSF短編も描いていました。私は、両方を読んでいて、すごい人だと思っていました。
私は、1巻「カンビュセスの籤」と2巻「みどりの守り神」を持っています。

かなり怖い話が多いように思います。中には、未来から来た「自分」たちの争いに嫌気がさして自殺してしまう少年、という「ドラえもん」をひっくり返したようなものもあります。
人の狡さや醜さ、弱さを凝縮したような味わいがあります。また、話の内容によって絵柄を変えたりといった「職人」のような技もあります。作者の懐の深さを感じさせる作品群です。


勝2003/08/23:「普通の少年」
「ヒカルの碁」ほったゆみ 原作 小畑 健 画 梅沢由香里 監修 コミック

唐突なような連載の終り方。それも、主人公の敗北という幕切れ。作者は、主人公を守ったのではないでしょうか?

本作の主人公は、ごく普通の少年です。囲碁の才能は秘めていても、スーパーヒーローではない。連戦連勝はしないのです。
かつて天才棋士であった霊に導かれたとはいえ、主人公は自分の意志で碁を打ち始めます。彼が霊に助けを求めたのは、自分のためであったことはありません。
碁はあくまでも1対1で打つもの。自分自身で考えるもの。少年マンガの世界だから、強いヒーローが主人公で当たり前?あの鉄腕アトムは、差別され、悩み、「強さ」に苦しみこそすれ誇ったりはしませんでした。
表面だけの強さを求めないで欲しい。作者はそう願ったのではないでしょうか?本作の主人公は 、これから本当の強さを身に付けていきます。作者は、彼を守り抜いたと私は思います。


2003/08/30:「時代に乗り遅れた者」
「マンガ日本の古典23 三河物語」安彦 良和 作 コミック

アニメーターとして有名だった作者が漫画家となって久しいです。
でも、この方のマンガは苦手という人も多いのではないでしょうか?「色」が透けて見えますしね。
オリジナルコミックでは鼻につく「色」が、歴史物では薄れてきます。既に存在する世界の中で自分の見方で物語を紡ぐ方が似合っているのかも、と思います。

大久保彦左衛門と一心太助、時代劇が好きでないと、また、古い物が好きでないと分らないかもしれません。私は故片岡千恵蔵氏のファンなので、分りますが。
本作は、作者が大久保彦左衛門の実像を想像しながら、作った物語です。地味です。シリーズ全体地味ですが、本作は特に地味です。平家物語は知っていても、三河物語なんて知っている人がどれだけいるか。
でも、読ん� ��欲しいです。作者を知るためにも。でも、これを面白いという人って、どれだけいるのかな。私は面白いと思うんですけどね。


2003/09/06:「神様は超越する?」
「うさぎパラダイス」竹本 泉 作 コミック

素っ頓狂な発想と博学な雑学が、少女マンガの設定上で、奇妙なバランスを取っていると思います。
私が最も好きな話は、眠れなくなった「苺太」が、頭の回転が速くなりすぎて「超越」しかけるやつ。おじいちゃん、ナイス!です。

ほんっとうーになんでもあり、な作品です。作者は結構苦心していたのかもしれない、などと思ったりして。


2003/09/13:「朝鮮の文化、在日朝鮮人社会」
「モランボンの朝鮮餞表」ジョン・キョンファ 作 栄養と料理文庫 料理本

一時、料理関係の本を購入していて、その中の1冊です。
これを初めて読んだ時、日本に対する朝鮮文化の優位性を強調している、と思いました。今、改めて読むと、そうでもないのですけれど。

著者は、いわゆる「在日韓国・朝鮮人」。朝鮮の文化を、特に食文化を通じて伝えたい、と料理のレシピだけでなく、日本食との考え方の比較も示しながら書かれています。
なぜ、当時の私は反発を感じたのでしょう?私が現代史に疎かったということもあります。しかし、ここに、大きな問題があると私は考えています。


2003/09/20:「何でもありの少女マンガ」
「ファサード」篠原烏童 作 コミック

本作は、多重生命体?な主人公が、時間軸を旅して、様々な世界と人々と関わっていく物語です。つまり、何でもあり。

同じ作者の中途半端に終ってしまった作品の完結編を書いてしまったり、北欧のバイキング、荒廃した未来社会、南米の古代文明、等々、作者の書きたい世界をアトランダムに描いていきます。
主人公自身、自分の正体を知りません。複数の人格(外見も)が同居しているため、物語によっては登場する姿も変わります。作者の博識と何にでも興味を持つ性格が如実に表れてもいます。

本作は、好みが分かれると思います。1つを深く掘り下げることを良しとする方や少女マンガを嫌悪する方には向かないでしょう。
作者のインナースペースに共感できる方なら、楽しめると思います。


2003/09/27:「神様の指令?」
「黒猫の三角」森 博嗣 原作 皇 なつき 画 コミック

実は、原作を読んでいません。だって、最近のSFやミステリって、過激な描写や不明解な動機の殺人物語が多いんですもん。
アガサ・クリスティーやアイザック・アシモフが好きな古代人としては、読み辛いのです。一時期人気だった某流行ミステリ作家の小説も、私には合いませんでした。

で、本作。
私もあるんですね、「動機無き殺人ってのをやってみたい」などと考えた頃が。やっていませんが。確か、高校2年か3年の頃には、そういう考えから卒業してました。
理由は簡単。本作の紅子さんと同じ考えから。そして、私は99%側の人です。頭が悪いから理屈をこねる。納得できないことは、できない。だから、無条件に「神様の指令」に従えない。そういう者には生き辛い世の中かもしれませんけ どね。


2003/10/04:「忘れたい作品」
「私立北凰高校 K.I.E.」たがみよしひさ 作 コミック

本作は、「お奨め作品」ではありません。そのため、ぽの顔マークを使いませんでした。

色々と考えて連載を始めたものの、途中で打ち切りになった作品です。粗筋も不明、ストーリー的には、ほぼ破綻しています。ギャグにすらなっていません。本当は、RPGのパロディのつもりだったんだとは思います。
最後の回、終らなかった物語の登場人物たちは、作者の妄想の中に入っていきます。そこにしか、彼らの行き場所はない。そして、作者は彼らを葬ることはできません。
巻末の後書きで、作者は本作を全く覚えていないと記しています。不幸な作品ですね、ホント。


2003/10/11:「ダメでどこが悪い?(うさ原風に)」
「桑田着ぐるみ劇場 だめっこどうぶつ」桑田乃梨子 作 コミック

狩りがダメで群れを追い出された狼、強すぎて群れをはぐれたウサギ、足が遅いドジなチーター、等々、今の人社会で言えば「負け組」たちが集まる森の4コママンガ。

主人公の狼「うる野」は、「ダメ王」とまで呼ばれるほどのダメっぷり。森で、乱暴ウサギ「うさ原」らと友達になり、なんとなく「前よりはしあわせ」気分。
「ダメとしあわせには因果関係はないからね」はぐれユニコーンの「ゆに彦」の言葉は、時々哲学者みたいです。本人は、昼間から一升瓶抱えてアタリメかじってますけれど。
疲れた時に「ダメでどこが悪いのさ!」と思う人なら、お奨め。



2003/10/18:「ファザーコンプレックスの嵐」
「ひっくりかえったおもちゃ箱」山本 鈴美香 作 コミック

女性というものは、美容体操なんかに精を出す時期が、生涯に1回くらいはあるものです。
一応、ファッションやCM業界の話で、主人公が取り組む「美容体操」などに憧れたりしたわけです。
しかし、今読むと...ひたすら「ファザーコンプレックス」と「娘可愛さ」の話ですね、これ。

実は、同じ作者の有名な作品が、私には気持ち悪かったんです。後の作者の変貌ぶりから、その正体が分ったような気がしたのですが。
本作は、作品自体は楽しいです。主人公の持つ劣等感、箱入り娘の天然ボケぶりは、微笑ましいものですし、登場する男性陣は好い男ばかりです。
ただ、本コラム的には、大変複雑な心境で「おすすめ」マークを進呈します。


2003/10/25:「このダンジョンに私も住みたい」
「金魚屋古書店出納帳」芳崎 せいむ 作 コミック

マンガ専門の古書店「金魚屋」。そこに集う人たちを描いたコミックです。

と説明してしまうと、これだけなんですけどね。
ひたすら「マンガ」に魅せられた登場人物たちが、周りの冷たい視線にも負けず、マンガを買い、読み、求め、愛し続けるのです。
COM版と朝日ソノラマ版の「火の鳥」、朝日ソノラマ版の「鉄腕アトム」全集、秋田書店版の「ブラックジャック」全巻を持ち、ガッチャマンLD全集を買った私は、ほぼ同類であり、素直に笑ってらんないんですけどね。手塚治虫全集、欲しいぞー!


2003/11/01:「愛、なのね」
「名探偵・金田一耕介シリーズ」横溝 正史 原作 JET 作 コミック

澱んだ沼のような人間関係、美男美女と陰惨な死体。
何度も映画化され、テレビドラマとしても映像化された「横溝ワールド」を、その世界をこよなく愛するマンガ家が描いています。

大変肉感的な美女も好いんですけどね、「金田一耕介」が実に魅力的に描かれています。同じ作者の描く「明智小五郎」と比べると差が歴然とします。
どんな作品にでも、作者の思い入れが必要でしょう。特に原作のあるものは、その加減が難しいと思います。そこがピタリと合った作品は、読者にとっても喜びだと思うのです。


2003/11/08:「お伽話の裏話」
「バーニーの絵日記」MINECO 作 コミック

一度も読んだことのない作者のコミックを、表紙の雰囲気だけで購入することがあります。失敗もありますが、自分に合ったモノの時は幸せな気分になります。
これは、そんな幸運なコミックでした。

とても優しい物語です。主人公のバーニーは、この手の話にありがちな優等生の頑張り屋さんですが、嫌味がなく、表情がとても好いのです。
特に1話目。彼の優しさと切なさがコマの中から伝わってきます。

巻末に、この物語の裏設定を作者が述べています。読んでいて気になったのは、作者自身が「人種」というものにこだわりすぎているのではないか、ということ。
日本人だって、大陸系と南方系がいるし、アイヌや琉球民族があり、東北と九州、西と東があります。
西日本を親の転勤で一回りし た経験者から見ると、日本という「国」も1つではないように思います。肌の色や目の色ではなく、育った文化の違いに意味があるんじゃないかな。人は、見かけで物事を判断しますけどね。
異文化を否定したり、軽視したり、敵視したり。相手を自分と同等と見れば、そんなことは出来ないはずだと思います。優柔不断、自主性がない、自分の意見がない、と言われようとも、他人の意見を尊重する人に、私はなりたいです。


2003/11/15:「料理は楽し!」
「クッキングパパ」うえやまとち 作 コミック

一時期テレビアニメにもなった作品です。私はアニメの方は見ていません。絶対に世界観が変えられていると思ったので。

1巻目は昭和61年初版です。現在、73巻目です。
毎回、料理の作り方が出てくるので、それを集めた料理本も出ていますし、料理のテーマ毎に再編した単行本も出ています。
でも、ただの料理マンガではないと思うのです。ほのぼの家族の話でもありません。
主人公の妻は育児休業中に我が子を窓から突き落としそうになります。一所に住むことの出来ない本物の風来坊がいます。ゴボウ天うどんから第二次大戦中の悲劇が語られ、老人問題が温かい目で描かれます。
悪い人は登場しません。地に足の着いた市井の人々の優しい話ばかりです。こういうマンガの連載が続くことが嬉� ��いです。


2003/11/22:「知恵、智恵、チエ」
「じゃりん子チエ」はるき 悦己 作 コミック

好きな人と苦手な人が分れるんでしょうね。好きな人にとっては、スルメのようなマンガです。
何度でも読める。何度読んでも、色々な味がしてくる。

色々な日本映画への思いがうかがえます。特に、クロサワ。お好きなんでしょう。

主人公のチエちゃんは、学校の勉強は苦手で宿題もしない。でも、活きる知恵と活力はいっぱい持っています。
ヒラメちゃんは、要領は良くないけれど、とても優しく根気のある子です。とても絵を描くのが上手いのに、授業時間内には描き終えることができません。
勉強が良く出来て、クラスをまとめるのが上手く、そこそこ器用に絵も描くマサルは、ヒステリー気味の母親の庇護から抜け出ようとして失敗します。
子供が子供でいられた時代。子供が大人と対等な世 界。今では、一種のユートピアに見えてしまうことが、とても悲しく思えます。


2003/11/29:「生命降るところ」
「草迷宮・草空間」内田 善美作 コミック

「草、魂が降ってきたよ」
人形の「ねこ」の台詞が、この作品の全てを物語っています。

なぜ、このコミックを買ったのか?理由は、私が人形好きだからです。
「内田善美」の名も知らず、連載中の作品も知らず、ただ、美しい日本人形の表紙に魅かれて購入しました。ですから、内田善美作品は、これしか持っていません。
何を書いても陳腐な表現にしかならない...作者は随分前に筆を折られたとか。本作品に巡り会えただけでも、私は感謝しています。


2003/12/06:「記憶の味」
「なつかしの給食」アスペクト編集部・編

どういうわけか、小学校の給食で食べたスープ状だった「カレーシチュウ」を食べたくて仕方がなくなりました。そこで某インターネット書店で検索して購入したのが、この本です。

当時ですら、「美味しい」と思っていたかどうか。また食べてみたい、という気にはなりますが、美味しいから、という理由ではないように思います。
給食というのは、日本全国で同一ではないんですね。この本は東京の給食が中心なので、西日本中心に転校を繰り返していた私には馴染みの無いものもあります。
「美味しさ」や「味」は、味覚だけでなく記憶と結びついている。それを実感する1冊です。


2003/12/13:「時代劇映画が、好き」
「どこかで誰かが見ていてくれる」福本清三  聞き書き 小田豊二

時代劇と云えば、テレビの時代劇しか知らない。私もそういう世代です。
かつては、日本でも映画や芝居が最高の娯楽だったのです。今は、他のも色々な楽しみが増えています。それだけに、人気を得るための工夫が必要とされます。それを忘れて、奢った結果が、今の日本映画の低調さなのではないかと思います。だって、観てて「つまんねー」ということが多いんですもん。

本作は、時代劇の斬られ役を40年も続けて来られた福本清三さんへのインタビューです。映画が好き、時代劇が好き、そんな思いが言葉の端々かが溢れるようです。
福本さんの素顔の写真が、また好いんです!「人って良いね」と思える本です。


2003/12/20:「お酒が、好き」
「酒屋さんが書いた 酒の本」大越 貴史 著

本当に「お奨め」かというと、ちょっと疑問符が付きます。1987年初版ですから、内容も現在とは多少ずれが出ています。もう入手も難しいでしょう。

読んでいると、ちょっとムッとするんですよ。お説教臭いというか、「これが本物なんだよ!」と主張し過ぎるというか。でも、お酒への愛は溢れています。
酒造業界の話は、酒飲みとしては大変興味深いです。某グルメコミックで、「純米」酒が、実は「米が原料ならいいんだろ」という表示にもなっている(例えば、米糠も米)という話やビールのドライ競争(申し訳ないですが、「ドライ」と称するビール類は私の口には合いません)の話も読みました。
酒は嗜好品です。美味しく、楽しく飲みたいです。理屈なんか要らない。ただ、銘柄ではなく、広告でもな� ��、自分の舌でちゃんと評価したいですね。


2003/12/27:「スポーツ根性ロボットアニメって、何?」
「惑星ロボ ダンガードA」松本 零士原作 テレビアニメーション

松本零士原作とは名ばかりではないかと思います。原作マンガも持ってましたけど。おそらく、テレビアニメとマンガの協業というパターンだったかと。原作連載マンガでは、展開に追いつけず、中途半端な終り方という印象を受けました。


はっきり書きます。既にこの時点で巨大ロボットシリーズは落ち目でした。だからでしょう。現在のゲーム類にもこのロボットは取り上げられていません。
だいたい、某「巨人の星」をロボットアニメでやろうという発想は何処から来たのでしょうか?ロボットの顔も格好良くないし。でも好きだったんですよね−。絵が綺麗でした!声優が神谷明さん、柴田秀勝さん、古川登志夫さん、吉田理保子さん。美形敵役は好きになれなかったんですが、主人公のライバル役が好きで好きで。
ただなー、話自体はそれほど好きではなかったのです。というわけで、微妙なお奨め。



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